唇が重なる寸前、止めた理由は
「…斬零?」
「……グリ、悪ィ。」
抱き締められていた其の腕を静かに外して、僅かに距離を置く。
不振な表情を浮かべる水浅黄の彼の唇に手を当てて。
「──タイムアウトだ。」
其の瞬間、斬零の躯が掻き消えた。
「………」
まるで桜の花吹雪のように消えた彼の残骸を手の平に乗せるように返したまま、暫し呆然と彼の消えた跡を眺める。
「…で、一体何の用だよ。──ウルキオラ。」
背後に感じる見知った霊圧に、振り返ることも無く問いかける。
立ち聞きとは良いご趣味をお持ちで、と鼻で嗤うグリムジョーに、ウルキオラは静かに視線を送る。
「関係無き者を此処へ入れるのは命令違反だ。」
「『カンケイシャイガイタチイリキンシ』ってか?──ハッ。お前が言えた台詞かよ。」
『イチバンサイショ』に彼を此処に入れたのはお前だろう、と。ソレを俺に取られたのが悔しいだけだろう、と。
グリムジョーは挑発するように話す。
「…だから、藍染様に悟られぬ内に教えに来たんだろうが。」
「アイツが消滅して泣くのはお前だからなァ?」
彼に溺れているのはお前の方だ。言外に含まれた意図に、ウルキオラは眉を顰める。
「──…そういうお前はどうなんだ。」
彼が消えても、お前は何も感じないのか──
あの日の血液の温度を
耳元にかかる嬌声の吐息を
己が名前を頻りに叫ぶ声を
腕の中に収まる細い体躯を
自らを吸い込む金色の瞳を
その総てを失っても、お前は慟哭すらも上げぬのか──?
「──ハッ。 愚問だな。」
ウルキオラに背を向けた侭、グリムジョーは白い天井を仰いだ。
「そん時は、この躯引き千切られても
──『 』」
理路整然と、まるで正論の如く同胞への裏切りを語る彼に、ウルキオラは絶句する。
しかし、其れと同時に会得も納得も同意すらもした。それほどに彼は──…
「…『違う所で出会っていられたら』等、気休めにもなりはしないな…」
グリムジョーの宮殿を抜け、自宮へと向かう途中。誰にも聴かれぬよう、ウルキオラはただぽつりと呟く。
彼が選んだのは、この居場所を捧げた自分では無かったが、それでも。
彼の存在が消えぬというなら、多少の犠牲は已むを得まいと。
たとえ其れに自分が相成ろうとも、構いはしないと。
だから、あの台詞に相違が見えようものなら、自分の手で奴の黒幕を引くと、静かに心に誓う。
其れこそが、『あの方』への裏切りだと、気付いてはいたが。
構いはしなかった。
其の日、終ぞ二人が視線を交わすことは無かった。
-了-
■ヒトリゴト■
………可笑しい。
私は0615にグリ一を、否、グリィチを書きたかった筈なんだ!!
それが何だ!!グリ白になった挙句、グリ白を書こうとして最終的にはグリ白←ウルかっ?! しかも何なんだこの中途半端加減はァ!!
グリと斬零全然ラブイチャしてないじゃん!!
完全完敗だよっ!!んもぅ!!
…リベンジ決定ー。(笑)