全戦完敗

あぁ、なんだかもう。
多分一生勝てない気がする。


「何してんだお前。」
「あ?グリのベッドで寛ぎちぅーv」

 グリの自宮にある寝室のベッドの上で、一護の虚である斬零-ザクロ-が現世から持ち込んだ御菓子やら漫画やらを広げ、恰(アタカ)も自室の如く寛んでいた。ベッドは軽くロングキングサイズを一回りも二回りも超えるほど大きいにも関わらず、そのベッドを所狭しと御菓子と漫画とゲームが埋め尽くしていた。

「………ハァ…お前なぁ…。俺が何しに此処に来たか分かってんだろ?」
「んー?悪戯がバレて藍染から呼び出し喰らって、いつもの如くギンちゃんにからかわれて、んで東仙さんにお説教喰らって凹んで帰って来た?」
「凹んでねぇよ。」
「そ?」

 別にどっちでもいいや。と持ち込んだホワイトチョコの入ったトッポをぽりぽりと咀嚼しながら、読んでいた漫画に視線を戻す。

「っつーかっ!!俺は寝に来たんだよ!!いい加減其処を片付けやがれ!!」
「えーっ もうちょっと良いじゃん!今漫画イイトコなんだよ。あと30分待って?」
「30分はちょっとじゃねぇ!今すぐ片付けろっ!!」
「ぶーっ グリのケーチ」
「ケチじゃねぇ!!此処は俺の部屋でコレは俺のベッドだっ!!」

 愚痴りながらも渋々と片付け始める斬零を手伝い、グリムジョーもベッドに散乱するそれらを掻き集めて床に下ろした。

「あーもーお前一体何しに来たんだよ…」

 ベッドから下ろしたそれらは軽く山を拵えており、よくもベッドの上で御菓子を食べて食べかすが出なかったものだと少し関心した。その山を見下ろしながら、疲れたと項垂れるグリムジョーに、斬零は後ろから抱きつく。

「グリ、もう寝んの?」
「ア?だからそのために此処に帰って来たって言ったろぉが。」

 何を言ってんだ、と斬零を振り返るグリムジョーに、斬零は絡ませた腕に軽く力を入れながら、ふぅん、と曖昧に返事をする。

「俺も寝に来たんだけどなー。」
「だったらさっさと寝ちまえ。」

 斬零の腕を軽く外してさっさとベッドに潜ってしまうグリムジョーに、斬零はぷぅっと頬を膨らませて。

「うぉっ?!」

 寝ているグリムジョーを仰向けにひっくり返して、丁度腹のところに跨った。

「なっ何すんだ斬零っ!!俺寝るって言っ」
「うっさい!!『寝に来た』っつってんのに何で気付かねぇんだよ馬鹿グリっ!!アホグリムっ!!グリム童話のおジョー様めっ!!」
「ハァっ?!人の睡眠邪魔しといて逆ギレかっ?!大体『寝に来た』って何───ん?」

 今さり気無く聞き流した台詞に、なんだかトンデモナイ意味が隠れていた気がして、グリムジョーは先ほどの会話を脳内で逡巡させる。

「………斬零お前……もしかして誘ってたのか…?」
「気付くの遅ェっ!!」

 漸く結論を出したグリムジョーの頭を、斬零は台詞と同時に拳で殴った。「痛い」と全然痛く無さそうに殴られた頭を摩るグリムジョーに、斬零は自分の帯を解いて白い死覇装の前を肌蹴させて。

「──で?ヤんのかヤんねぇのかどっちだ?」

 真っ向から正々堂々の艶美なる宣戦布告。
 青い舌で妖艶に眼の下の痣を嘗められれば、その誘いに乗らないワケも無く。

「この状況で拒否ったら二度とさせてくんねぇんだろ?」
「ハッ 何を今更当然のことを?」

 煽られるままに唇を重ねれば、開戦早々に敗北の鐘が響く。


あぁ、多分、俺は一生。
この白い恋人には勝てないんだろう。

…勿論、精神論であって、褥の上では別の話だが?

-了-


■ヒトリゴト■
…なんだこの新婚バカップルみたいなノリは…orz
つーかなんでグリがヘタレになってんだっ?!
もっとラブラブにしたかったのになーorz