林檎と蜂蜜

可愛くないのも素直じゃないのも分かってる
だけど偶には、
壊れるほどに愛されたい



「任務で散々だったんだってな。剣八。」
「…誰に聞いたんだ。」

 久しぶりに来た尸魂界。偶には剣八のトコにでも行ってみようかと思ったら。虚の大量討伐任務でやちる庇って脚に大怪我して帰ってきたって一角に聞いた。いつもならしないヘマやらかして、今は相当機嫌が悪いから近寄らない方が良いと弓親に忠告を受け。今にも泣きそうな顔でうろうろしてるやちるに様子を見てきて欲しいと頼まれた。

「さァ?でもまぁ、アンタのこと心配してる誰かなのは確かだろ。」
「余計なお世話だ。」
「はっ!自分がヘマして周りに心配掛けといて、その相手には『余計な世話』か。隊長サマってのはいい身分だな。」

 苛立っているのは霊圧を探るまでも無く、その態度と空気だけで十二分に分かる。
 それでも俺は敢えて、剣八を刺激するように神経を逆撫でする台詞を吐く。

「自棄に突っかかるじゃねぇか。何が言いてぇんだ?」
「別に?アンタが自分のことしか考えずにイライラしてんだったら、アンタを心配して不安そうにしてる奴らが馬鹿みてぇだって思ってな。」
「…は、何だ?自分もその一人だって言ってるように聞こえんぞ?」

 剣八のその台詞にこっちが苛立って、俺は剣八が怪我してんのも構わずに万年床に胡坐掻いてる剣八の肩口を力一杯蹴飛ばした。

──ダァンっ!!

「──っつ!…っに、すんだテメェ…っ」

 力一杯蹴飛ばしたはずなのに、軽く後ろに手をつくだけで衝撃を受けた剣八に多少の悔しさを覚えつつ、仰向けに倒れかけた剣八の上に其の儘乗っかる。

「何で分かんねぇかな…」
「あ?」

 ぐぃ、と、剣八の下ろされていた長い黒髪を引っ張って。剣八を見下ろす形で紅い双眸を覗き込む。

「そうでもなかったら、俺が態々アンタのトコになんか来るかよ。」

 驚いたように、少し眼を見開いて何かを言おうとした口に噛み付くように口付けた。


+ + +


「…お前が乗り気なのは嬉しいがよ…。本気で今ヤる気か?」
「あ?何?怪我してる脚が心配なわけ?」
「…そりゃァ、お前…」

 卯ノ花さんから聞いた話だと、剣八の左足は完全に折れていて、更には神経までイッちまってるらしく、剣八の霊力を持ってしても、最低でも2週間は絶対安静らしい。
 …でも。

「…はっ!アンタなら平気だろ?」
「あん?」

 剣八の着流しの帯を解きながら、俺は剣八を軽く見上げて笑う。

「アンタなら、例えこの二本の脚が折れてようと、例えば三日間不眠不休で仕事してようと、『俺が相手だったら』──平気だろ?」

 ぺロリ、と舌を出して。
 誘う目線で舐め上げれば。

「はっ!違ぇねぇ」

 途端に目に獣を宿して、俺の服を剥ぎに掛かる。


──サァ、踊リ続ケマショウ…?


-了-



■ヒトリゴト■
剣ちゃんハピバ小説ー!…なんですが、これフリーにしようか迷い中…。………希望があったら、でいいや。(逃走)
あ、そういえば、激裏にこの続きがあります。勿論エロです。エロ度は…然して高くは無いけども。